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夏の海の思い出

高校生の頃、お盆に家族で海に遊びに行った。
弓削という瀬戸内海にある島に渡ったのだが、とても波が高くて海水浴場でも泳いでいる人はまばらだ。
ちょっと海水浴なんて「かったるい年頃」だったので(?)水着にも着替えず姉と手漕ぎボートに乗った。
なにしろ波が荒いので前になかなか進まない。それでもボーイスカウトにいた友達がいてボートの操作が上手なのっていう話をしながら頑張って沖に向かっていた。
他にも一艘、カップルが乗ったボートがあったのだけど、女の子が波酔いしたのか、喧嘩をしたのか、監視台に女の子が移って置き去りにされていた。どういう状況だったのか不思議だった。だって、後で迎えにくるなんてすっごく大変そうなくらいだっんだもの。私たちはそれを見て「置き去りにされてる~っ」と見て笑っていたっけ。いまだに謎が解けないが。

そうこうしながら船は随分と進んで浜辺が遠くなってきた。

海面に目を落とすと船体のすぐ横にゴミが溜まって浮かんでいる。「こんなところに汚いね~」と呑気に構えていたら、ふとゴム手袋が目に留まった。

「あれ、手だったりして」な~んて言っていたら「ちょっと待って!」「爪があるっ!」「人間!?」「ウソッ」

きゃあぁ~~~~ぁ・ぁ・ぁ・・・っっ!

二人で身体をかがめてパニックに陥っていた。
叫び続けてしばらくして「ふぅ。。。」と身体を起こすと、まだココにある!

きゃあぁ~~~~っ!

姉も身体をかがめて叫びながらオールを漕いでいたので、オールの先が宙に浮いていて、ちっとも海に浸かっていなかったのだった・・・。ちっとも進んでいなかったのでした。

「ちゃんと漕いでよお!」って無我夢中でハァハァ言いながらようやっとビーチに戻ってきた。

いつの間にか日傘なんてさしちゃって私たちを眺めていた両親が笑っていた。「あなたたち、何してるの?」だってさ!子供が大変な騒ぎになってるっていうのにさ~。
で、状況を説明したの。

今ね、ゴミの中に人の手があったのよ。
ぶよぶよに海水でふやけたような感じだった。
色がまた薄灰色がかっていて。
爪があったよ。絶対!
皺もあった。指の関節のとこ。
あれはゴム手袋じゃないよ!
あの下には身体があったのかな?

と二人で口々に報告しているのに母は「そんなに言うなら警察に届けたら!?」

・・・そう言われると。
だって、また見つかるかどうか解らないじゃない。
結局そのまま帰った私たち。

今でもずっと信じてるんだけど。

「見つかったら見つかったで怖いよネ」とは姉の談。これ書いて見せたら二人で思い出して盛り上がってしまった。

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