脱臭炭

我が家の定番の朝食はパンとコーヒーだ。
いつもトーストの時はガスコンロに付いている魚焼き用グリルで焼く。
他にも道具はあるけれどこれが一番美味しく焼けると思うのだ。
なんでもグリル内は短時間で400度にもなるから外はコンガリ中はふんわり仕上がるし、気になる臭い移りもない。ちなみに、魚を焼いてそのまま洗うのを忘れてしまい使おうとする度にギトギトで開けるのも嫌だということを聞いたことがあるが我が家では朝一番にグリルを使うので汚れたままにするなんて論外!いつもキレイなのだ。
しかしパンを出すタイミングは3分おきになる消し忘れ防止のアラーム以外には自分の感覚が頼りだ。
今朝は果物を切っていてうっかりパンを出すのが遅れた。しまったと思って開けたらチーズをのせていたおかげで焦げずに済んだ。
「あー、焦がすところだった。やばかった!」とテーブルに運ぶと
「焦げたら下駄箱に入れて脱臭剤にすればいいやん」と満面の笑みと返事が返ってきた。
そうだ、その手があった!


先日、旦那さんの実家に行った時のこと。
ちょっと裏の山へ上がろうということになり旦那さんは独身のときに履いていた歩きやすいヒモ靴をお母さんに出してもらった。
そのとき私はちょうど靴を出すお母さんの後ろに立っていた。なんとなく手元を見ていたら取り出したい靴の上に載せてあった ”白色発泡トレーにアルミホイルを敷き上になにやら真っ黒なカスカスした物体を載せた物” をそっと横へ除けるのが見えた。
「?」
「なんですか、ソレ」とつい突っ込んで聞いてしまった。
「え?これは焼きすぎたトーストよ。こうやって入れておいたら脱臭剤の代わりになるのよ」とお母さん。
ええ~!?
改めて見ると上1/3が真っ黒に焼け焦げた厚切りトーストだ。
「おかあさん、だったら全体が真っ黒になってた方が良いのでは?」
もちろんそうだという風に「裏も真っ黒よ」と言って下駄箱の扉を閉めた。
裏も真っ黒であったとしても真ん中は茶色い食パンの耳と同じ色のままだったよ。
どの位焼けていたら炭のような脱臭効果が生まれるのか分からないけれど、まだ焼けていない部分がある以上靴箱から出すタイミングは黒くない所にびっしりとカビが生えた時ではないだろうか。
ちょっとすまして得意気を装いつつ、恥かしげでもあったお母さんの様子を思い出すと可愛らしくて可笑しくてたまらなくなる。
当分、トーストを焼くたびに思い出してニヤッとせずにはいられない。

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