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味がしない

その後メロン・ジュースのことはすっかりと忘れ、中学生になり試験勉強をやっていたある夜のこと。
子供の頃はあまりコーヒーを飲みたいと思うこともなく、母や姉は好きで大量に飲んでいたので、横からたま~にひと口だけもらったりする程度だった。
だから、例え遅い時間まで勉強していて起きていても眠気覚ましにコーヒーをいれてと頼むことはなかったのだけど、その日は母が気遣って差し入れを持ってきてくれた。

「もう夜遅いし、あんまり濃いのは胃に悪いからミルクをたっぷり入れてきたわよ」

「ありがと!」と言ったものの、元々何か食べたいというわけではなかったし、もうそろそろ終わりにしようと思っていたので、実は差し入れはちょっと有り難迷惑だったりもするが・・・。

でも、せっかくだから飲もうかなー。
持ってきてくれたコーヒーには砂糖もミルクもすでに入っていて香ばしい香りがしていた。(砂糖いらないのに~。)

ゴクッ。

あれ?なんかいつもと違う味???

コーヒーっぽいような、そうでないような。
でもコーヒー色してるし、砂糖とミルクは入ってるし、香ばしい香りもしてるし。

とりあえずゴクゴク飲んで、空いたカップを台所に返しに行った。
まだ母はそこにいた。

「ごちそうさま」
「あ、もう飲んだの?」
「うん」

「なんか、このコーヒー味が変わってない?」
「傷んでることはないでしょう」
「そぉ~?」(←疑いの眼差し)

「でも、コーヒーの香りしなかったよ。よっぽど古いんじゃない?」
「・・・(沈黙)。あんた、するどいなぁ~!!」

どうやら、それは端からコーヒーと呼べるものではなかったらしい。

番茶をコトコト煮詰めて濃い色を出し、砂糖とミルクを入れただけのものだった。

げげっ!なんちゅうものを飲ますんや!!

だって、本物のコーヒーは眠れなくなったらイケナイし、胃を壊してもイケナイでしょう。
でも、頑張ってるから何かしてあげたい。番茶なら風邪の時にも飲むように胃にやさしいし。
これぞ母の愛!

なんて言ってたけど、どお思う~?この親!

バレてもまだ「でも、コーヒーみたいな味がしたでしょ」だってさ。
少なくともタンポポコーヒーより近い。

しかしさ~、夫婦揃って娘を実験台にしてないかーっ。

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